Difyの使い方完全ガイド!5つのアプリタイプを徹底解説


AIツールを活用した業務効率化が急速に進む中、プログラミングなしで本格的なAIアプリを構築できるプラットフォームとして注目を集めているのが「Dify(ディフィ)」です。
とはいえ、「どのアプリタイプを選べばいいのか?」「業務にどう活用すれば効果的か?」と悩む方も少なくありません。

Difyには、用途ごとに特化した5つのアプリタイプが用意されています。このアプリタイプの選択が、アプリの成功可否を左右する最重要ポイントです。適切な選択をすることで、開発の手間を大幅に削減しつつ、高い業務成果を得ることが可能になります。

本記事では、初心者にもわかりやすく、Difyの基本と5つのアプリタイプの違い、選び方のポイント、さらに代表的な活用事例を体系的に解説していきます。

Difyにおける5つのアプリタイプとは

Dify(ディフィ)では、AIを活用した業務効率化を目的に、異なる用途に最適化された5つのアプリタイプが提供されています。どのアプリを選ぶかによって、実現できる処理の内容、対話形式、外部連携の範囲、開発難易度などが大きく変わってきます。

まずは、それぞれの特徴を一覧で比較して、全体像を把握しましょう。

アプリタイプ早見表

アプリタイプ処理形式対話性記憶機能外部連携主な活用シーン
チャットボット対話型(継続)ありFAQ応答、社内ヘルプ、新人教育など
テキストジェネレーター単発実行型なしSNS投稿、提案書、翻訳、要約など
ワークフローステップ実行型なしなし請求処理、データ変換、定型業務など
チャットフロー対話+処理分岐型中~高あり中~高顧客診断、予約案内、教育対話など
エージェント自律型タスク実行条件付きあり市場調査、分析、複合業務など

このように、Difyのアプリタイプはそれぞれ異なる目的に特化しており、「どの業務に、どの形式が合うか?」を理解することが、最適な選択と効率化への第一歩となります。

次はそれぞれのアプリタイプの特徴と活用例を個別に見ていきましょう。まずは「チャットボット」から解説します。

チャットボット–対話型AIの基本機能

特徴とできること

チャットボットは、Difyの中でも最もベーシックかつ導入しやすいアプリタイプです。ユーザーとの自然な会話のやり取りを前提に設計されており、以下のような特徴を持ちます。

  • 会話の文脈を保持する「会話メモリ」機能により、過去の発言をもとに自然な対話を継続できる
  • システムプロンプトの設計が比較的シンプルで、初学者にも扱いやすい構造
  • ナレッジベース(FAQや社内マニュアル)を参照できる「コンテキスト」機能により、業務固有の情報を反映した回答が可能
  • OpenAI、AnthropicなどのLLM(大規模言語モデル)を選択可能

活用事例(顧客対応・社内ヘルプなど)

導入事例として特に多いのが、社内外の問い合わせ対応の自動化です。以下のような業務で成果が報告されています。

活用領域導入効果(例)
顧客サポートFAQ対応の自動化により、対応時間15%削減
財務・経理部門社内情報検索チャットボットで、問い合わせ対応時間を15%短縮
ITヘルプデスクパスワードリセット案内などで、問い合わせ件数30%減
人事部門休暇申請・就業規則の自動案内により、新人教育時間50%短縮

Difyのチャットボットは、株式会社カカクコムやリンクアンドモチベーションなどの実例でも活用され、業務の「問い合わせコスト」を減らす強力な手段となっています。

適したシナリオと選ぶべき場面

チャットボットが最適なのは、以下のようなニーズがある場合です。

  • 柔軟なやり取りを通じて、ユーザーと対話形式で問題を解決したい
  • 業務知識をAIに参照させながら、質問応答を行いたい
  • 設定をシンプルに済ませ、早期導入したい

一方で、「処理の分岐」や「複雑なフロー」が必要な場合には、チャットフローやエージェントの方が適しています。

テキストジェネレーター–文章生成に特化したシンプルアプリ

特徴とできること

テキストジェネレーターは、Difyにおいて単発の文章生成を効率的に行うことに特化したアプリタイプです。チャットボットのような会話の継続性はありませんが、その分、構成がシンプルで設計しやすく、初心者でも扱いやすいのが特長です。

主な特徴は以下の通りです:

  • 会話形式ではなく、「入力に対して一度だけ実行する」タイプ
  • 入力値を変数として柔軟に扱える(複数行テキスト、選択肢、数値入力など)
  • 生成される文章の方向性をシステムプロンプトで明確に制御できる
  • LLM(大規模言語モデル)を自由に選べる

活用事例(SNS投稿・提案書・翻訳など)

テキストジェネレーターは、特にコンテンツ制作業務社内文書の効率化に活用されています。以下のような分野で効果が報告されています。

活用領域効果・成果例
マーケティングSNS投稿文・広告コピーの自動生成で制作時間70%削減
営業提案書・見積書のドラフト作成で資料作成時間60%短縮
法務契約書の初稿やチェック文の生成で初稿作成時間80%短縮
広報ブログ記事からX投稿文(120字+ハッシュタグ)自動生成ツール

また、プロンプト次第で「敬語での返信メール作成」「ブログタイトルの候補出し」「要約や翻訳」など、幅広い用途に応用が可能です。

適したシナリオと選ぶべき場面

テキストジェネレーターは以下のようなケースに適しています。

  • 決まったフォーマットの文章を繰り返し作成する業務
  • 文章の雛形や下書きを短時間で出力したい場合
  • 入力内容に応じた文章を一発で生成したい業務(例:商品説明文、Q&Aなど)

一方、継続的なやり取り対話型の処理が必要な業務には不向きです。その場合はチャットボットやチャットフローを選ぶべきです。

エージェント – 自律的タスクの実行支援

特徴とできること

エージェントは、Difyアプリの中でも最も高度かつ柔軟な処理能力を持つタイプで、AIが自ら考え、必要なツールを呼び出してタスクを遂行します。以下のような特徴があります:

  • シンキングモードにより、タスクの分解・計画・実行をAIが自律的に行う
  • 外部ツールやAPIとの連携で、複雑な情報収集・分析・レポート作成を自動化
  • Web検索、計算処理、社内DB照会などを組み合わせたマルチステップ実行が可能
  • 「プロンプト設計」によって、出力精度や自律性のバランスを調整できる

エージェントは、単なる質問応答ではなく、タスクの完了を目的とした行動型AIとして活躍します。


活用事例(調査業務・業務横断処理など)

エージェントは、以下のような複雑な業務プロセスの自動化において特に高い効果を発揮します:

活用領域導入効果(例)
市場調査競合情報の収集とレポート生成により、調査時間90%削減
投資分析財務データの取得・分析で、分析精度40%向上
品質管理不具合レポートの分類と対応策の提案で、対応速度3倍向上
出張手配日程入力だけで、交通・宿泊の自動予約+申請処理
顧客対応問い合わせの分類・CRM照会・返信文作成まで一括処理

特にリンクアンドモチベーションでは、エージェント型AIの活用により、複数部門の調査・処理業務を統合し、年間9,000時間の業務削減を実現しています。


適したシナリオと選ぶべき場面

エージェントの導入が最適なのは、以下のような場面です:

  • 調査や分析など、複数ステップからなる業務プロセスを自動化したい
  • Web検索や社内データ参照など、外部データの取得・活用が必要
  • 単なる応答ではなく、AIにタスクの遂行そのものを任せたい

一方、設定が複雑になりがちであるため、Dify初心者にはややハードルが高いアプリタイプです。導入時には、プロンプト設計の基本やツール連携への理解が求められます。

ワークフロー–定型業務の自動化ツール

特徴とできること

ワークフローは、決まった手順を自動化することに特化したDifyのアプリタイプです。作業の流れを視覚的なブロック構造(ノード)で構成できるため、複数ステップにわたる処理を分かりやすく設計できます。

主な特徴は以下の通りです:

  • 会話型ではなく、処理の流れ(フロー)を定義する形式
  • 「記憶機能」はなく、毎回リセットされた状態で実行
  • ノードを使って、条件分岐・データ加工・外部サービスとの連携を実現
  • CSVでデータを一括処理できるため、バッチ実行に強い

活用事例(請求処理・データ変換など)

ワークフローは、特に繰り返し発生するルーチン業務の自動化において高い効果を発揮します。

活用領域効果・成果例
経理業務請求書PDF→仕訳入力への変換で処理時間85%削減
人事業務応募者の自動スクリーニングと面接日程調整で採用効率200%向上
製造業生産計画や在庫最適化で在庫コスト25%削減
広報複数メディアへのニュース投稿や翻訳処理の自動化

また、GoogleAppsScript(GAS)やWebhookとの連携により、Slack通知・スプレッドシート連携・外部API呼び出しも容易です。

適したシナリオと選ぶべき場面

ワークフローは以下のようなシーンで特に有効です。

  • 業務の手順が明確に定義されている(ルールベース)
  • 大量データをまとめて処理したい(CSVなど)
  • ミスが許されない、確実性が求められる業務
  • 自動化の安定性・再現性を重視

一方で、「柔軟な対話」や「途中での判断」が必要な場面には向きません。そうした場合はチャットフローやエージェントが適しています。

チャットフロー–高度な対話+処理設計のハイブリッド

特徴とできること

チャットフローは、Difyの中でも対話と処理の分岐設計を両立できる高度なアプリタイプです。チャットボットの「会話継続性」と、ワークフローの「処理の構造化」を組み合わせたような機能を持ち、ユーザーの回答に応じて動的に次の処理を切り替えるといったシナリオ構築が可能です。

主な特徴は以下の通りです:

  • 会話変数を使って、ユーザー情報や会話内容を記憶・再利用できる
  • 条件分岐(IF/ELSE)や複数ノードによる対話フロー設計が可能
  • ステップごとの処理や質問をビジュアルに組み立てられるUI
  • 会話の流れを制御しながら処理を挟むことができる(例:入力後にAPI呼び出し)

活用事例(ヒアリング・診断など)

チャットフローは、段階的な質問→条件分岐→回答提示という構成に適しており、以下のような活用例が多数あります。

活用領域効果・成果例
営業ヒアリング顧客のニーズ診断を段階的に行い、成約率35%向上
教育/研修学習進度や理解度に応じてカリキュラムを動的に変更→学習効率50%向上
医療・診断支援症状チェック→初期受診案内の提供で、診断精度30%向上
予約受付ユーザー情報を蓄積しながら、最適な時間・場所を提示

「ユーザーの回答によってシナリオが分岐する」「特定の条件下で処理を実行する」といったフローを対話形式で自然に実現できるのが、チャットフローの強みです。

適したシナリオと選ぶべき場面

チャットフローが効果を発揮するのは、以下のようなケースです。

  • 複雑な質問・処理を、段階的に案内したい業務(例:診断、申請、予約など)
  • ユーザー情報を保持し、後続の処理に反映させたい場合
  • 動的に処理ルートを変えたい対話型のアプリ
  • 非エンジニアでも視覚的にフローを設計したい場合

一方で、ツール連携や自律処理が主目的の場合は、より高機能なエージェントの方が適しています。

アプリタイプの選び方ガイド

「結局、自分の業務にはどのアプリタイプを選べばいいのか?」
Difyを使い始める多くの方が直面するこの疑問に答えるために、判断基準を明確化したチェックリストとフローチャートをご用意しました。

判断基準①:処理形式・対話性

アプリ選びにおいて、まず確認したいのが「処理の形式」と「対話の有無/継続性」です。

質問項目YESの場合推奨アプリタイプ
ユーザーと会話形式でやりとりしたいか?はいチャットボット、チャットフロー
単発の文章やレポートを一括で生成したいか?はいテキストジェネレーター
業務フローを定型処理で自動化したいか?はいワークフロー
対話の流れに応じて処理を分岐したいか?はいチャットフロー
柔軟な処理・判断・外部ツール連携が必要か?はいエージェント(中級者向け)

判断基準②:記憶機能の必要性

記憶の必要性対応するアプリタイプ
ユーザーとの会話内容を覚えて処理したいチャットボット、チャットフロー、エージェント
毎回独立した処理で問題ないテキストジェネレーター、ワークフロー
連携のレベル推奨されるアプリタイプ
シンプルなナレッジ参照だけでよいチャットボット、テキストジェネレーター
外部APIやCSVデータの処理が必要ワークフロー、チャットフロー
高度な外部ツール連携やWeb検索が必要エージェント

判断基準③:外部連携の複雑さ

アプリ選択フローチャート

迷ったときの判断ポイントまとめ

  • まずは「何をしたいか」を明確にする(対話/生成/処理自動化など)
  • 次に「情報の記憶」や「分岐」の要否を確認
  • 最後に「開発スキル」「外部連携の複雑さ」など実装面での制約を考慮

このように段階的に確認することで、初心者でも自信を持ってアプリタイプを選べるようになります。

初心者のためのDify学習パス

Difyには多機能なアプリタイプが揃っているため、いきなり高度な構築を目指すよりも、ステップを踏んで学習することが習得の近道です。ここでは、初心者が無理なくスキルアップできるおすすめの習得ステップと所要時間の目安を紹介します。

学習ステップと推奨順序

ステップアプリタイプ内容・目標所要時間の目安
1チャットボット基本的な対話型AIアプリの構築、ナレッジ参照、会話設計の理解1〜2時間
2テキストジェネレータープロンプト+変数で文章を生成する仕組みを学ぶ。フォーマット指定にも慣れる2〜3時間
3チャットフロー会話の流れと処理の分岐、会話変数の使い方など複雑な対話を設計4〜6時間
4ワークフローノードベースで処理を構築。外部APIやCSVのバッチ処理を組み込む6〜10時間
5エージェント自律的な処理実行・ツール連携・プロンプト構成の最適化(※別記事で詳細)8〜15時間

Dify習得ステップ図

学習のポイント

  • 最初は「チャットボット→テキストジェネレーター」の順で、LLMとの対話や文章生成の基本を理解
  • 次に「チャットフロー/ワークフロー」で処理の構造化や分岐制御を学ぶ
  • 最後に「エージェント」でツール連携や外部情報収集の高度化へ

この順序で学習すれば、開発途中での設計ミスや仕様変更による手戻りを防ぎながら、スムーズにAIアプリ開発の実践力を高めていくことができます。

まとめ

Difyは、ノーコード・ローコードでAIアプリを構築できる強力なプラットフォームですが、真価を発揮するには適切なアプリタイプの選択が不可欠です。

本記事では、以下の5つのアプリタイプの特徴と使い分けについて解説しました

  • チャットボット:会話の履歴を活かし、自然な応答が可能。FAQや社内問い合わせ対応に最適
  • テキストジェネレーター:単発の文章生成を効率化。提案書、SNS投稿、翻訳などに活用
  • ワークフロー:決まった業務フローの自動化に強み。定型業務や大量データ処理に対応
  • チャットフロー:複雑な対話と処理の分岐を統合。顧客診断や予約対応に適する
  • エージェント(今回は非解説):自律的な判断と外部ツール連携が必要な高度業務向け

また、初心者向けには、チャットボットからスタートし、徐々にステップアップしていく学習パスを推奨しました。アプリ選びに迷った際には、処理の形式、記憶の有無、外部連携の必要性といった視点から選定することで、より効果的な導入が可能になります。業務にマッチしたアプリタイプを選ぶことが、Dify活用の第一歩。

無駄な設計ミスや学習コストを抑えながら、業務改善に直結するAIアプリを構築するための基盤を、本記事でしっかりと掴んでいただけたなら幸いです。

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