ナンバーワンソリューションズの堂本です。今回は、ChatGPTのファインチューニングについて解説していきます。
「ChatGPTのファインチューニングって何?」
「ChatGPTをファインチューニングする料金やメリットは?」
このように疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
ChatGPTのファインチューニングを利用すると、業務の効率化が期待できます。
そこで本記事では、ChatGPTのファインチューニングの概要を解説します。
最後に紹介するChatGPTをファインチューニングするメリットやデメリット、注意点もぜひ参考にしてみてください。
ChatGPTのファインチューニングとは
ファインチューニングは、特定の用途やニーズを満たすようAIモデルをカスタマイズするために時間を要するプロセス。ファインチューニングはAIモデルが意図されたゴールをよりよく達成するのを支援するだけでなく、コスト削減とレイテンシー低下も可能にする。
また、OpenAIは米国時間4月4日、「Custom Models Program」の拡張とファインチューニングAPI向け6機能を発表しました。
ファインチューニングAPI向け6機能
OpenAIが新しく追加した6機能は以下のとおりです
・エポックベースのチェックポイント作成
・比較プレイグラウンド
・サードパーティ統合
・包括的なバリデーション指標
・ハイパーパラメータを設定
・ダッシュボードの改善
それぞれの機能を簡単に紹介します。
1.チェックポイント作成
エポックベースのチェックポイント作成は、学習の進捗を自動で保存できる機能です。
モデルが学習を重ねる毎に、その状態を自動的に保存する機能で、モデルがデータに過度に適応してしまう「オーバーフィッティング」を防ぐのに役立ちます。具体的には、あるモデルが猫の画像を認識するトレーニングを行っている際、定期的にその学習の進捗を保存することで、もし学習が行き過ぎてしまった場合でも、適切な時点に戻れるようになります。
2.比較プレイグラウンド
比較プレイグラウンドは、新しいインターフェースで、複数のモデルやファインチューニングのバージョンを同時に比較して、その結果を評価できるようにするものです。
たとえば、英語から日本語への翻訳モデルがどのバージョンが最も自然な翻訳を行うかをサイドバイサイドで確認できます。
3.サードパーティ統合
サードパーティ統合は、例えば分析ツールのWeights and Biasesと統合することで、ファインチューニングの詳細なデータを開発者が他のツールと共有できるようにするものです。
4.包括的なバリデーション指標
包括的なバリデーション指標は、選んだ少数のデータだけでなく、バリデーションデータセット全体でモデルの損失や精度を計算できるようになりました。
これにより、モデルの品質に関するより深い理解が得られます。
5.ハイパーパラメータを設定
ダッシュボードから直接「ハイパーパラメータを設定」できるようになり、これまでAPIやSDKを通じて行っていた設定をより簡単に行えます。
6.ダッシュボードの改善
ファインチューニングダッシュボードを改善し、ハイパーパラメータの設定やトレーニング指標の詳細表示、過去の設定からのジョブの再実行が容易になりました。
これらの新機能により、開発者はAIモデルを自社の特定の用途に最適化する作業をより効果的に行えるようになります。モデルのトレーニングがこれまで以上に簡単かつ柔軟になり、望む結果を得るまでの時間と労力を大幅に削減できます。
具体的にファインチューニングでできることはどのようなことがあるのでしょうか?
ファインチューニングの特徴
ファインチューニングの特徴として、次の2つが挙げられます。
・AIの知識参照
・キャラの物まね精度を上げる
1.AIの知識のみを参照
ファインチューニングは、利用するLLMの学習データを参照します。GPT-4であれば、GPT-4がこれまで学習したデータを元に、ファインチューニングをすることができます。そのため、LLMで学習していないデータを活用することはできません。
2.キャラの物まね精度を上げる
ファインチューニングすることによって、特定のキャラの話し方を真似ることができます。学習を重ねていけば、特定のキャラと同じような話し方を、例えば、chatgptを通して実現することができるようになります。
ChatGPTのファインチューニングの2つのメリット
ChatGPTをファインチューニングすることのメリットは次の2つがあります。
1.時間の節約
2.一貫性のある学習成果
それぞれ解説していきます。
1.時間の節約
時間はビジネスにおいても技術開発においても、最も貴重な資源の一つです。ファインチューニングによって、ChatGPTは迅速にカスタマイズされ、短期間で市場や業務に適用する準備が整います。
想像してみてください。一からモデルをトレーニングする場合と比較して、既に広範な基本知識を備えたモデルに特定の知識を追加するのは、高速道路でスピードを上げるかのように効率的なのです。
2.一貫性のある学習成果
ChatGPTがファインチューニングされた後、それはまるでカスタムメイドのスーツのように、その学習内容がぴったりとフィットします。
学んだ内容や表現は、ファインチューニングを通じて強化され、より確実にユーザーの期待に応える形で応答が行われます。
例えば、企業が特定のブランドのトーンやスタイルをChatGPTに学習させたい場合、ファインチューニングはそのユニークな声を作り上げるための鍵となります。
以上のようなメリットから、ChatGPTのファインチューニングは、時間の節約をしたい企業や、LLMに自社のブランドのトーン、キャラクターの話し方を覚えさせて、モノマネをさせたい場合は、非常に有効なツールとなります。
ChatGPTのファインチューニングの4つのデメリット
ファインチューニングのデメリットも存在します。どのようなデメリットがあるのか解説します。
1.知識の限定性
ChatGPTのファインチューニングは、特定のデータセットに基づいてモデルを強化しますが、新たな知識の獲得には限界があります。
実用で使えるレベルのLLMのモデルデータは10GB以上です。ここにファインチューニングのデータを入れたとしても、モデルデータをベースにした回答が強く出やすい傾向になるため、新しくLLMに学習させることは期待できません。
自社ルールを覚えさせるといったカスタマイズは、ファインチューニングだけでは完全には達成できません。例えば、独自のビジネスプロセスや内部規則をChatGPTに理解させたいと考えたとしても、期待する内容は出力されないでしょう。
2.運用費が高い
ChatGPTを利用してファインチューニングを行う場合、コストにも注意する必要があります。例えば、ChatGPTの無料版(GPT-3.5)では、学習には1000トークンあたり0.008$、テキスト入力には0.030$、テキスト出力には0.060$が必要となります。
データ量が増えれば高い精度のファインチューニングが可能ですが、その分料金も高額になることがあります。したがって、予算を設定してからファインチューニングを始めることをおすすめします。
3.メンテナンスが必要
一度ファインチューニングを設定したモデルのメンテナンスは必要ありません。しかし、モデル自体がアップデートした場合は、再度ファインチューニングする必要があります。
定期的にモデルがアップデートするなら、そのたびに、ファインチューニングの設定が必要となるため、時間と手間がかなりかかります。
ファインチューニングを行う際にもそれを考慮してください。
4.回答の精度は変わらない
ファインチューニングをすることで、ChatGPTが特定のトピックや産業に関する専門家のように回答すると思われていますが、実際に回答の精度は期待できません。
特徴にもあるように、ある人の表現のものまねができる程度で、ファインチューニングをしたとしても、モデルデータの回答が強く出てしまうため、専門的な内容の出力は期待できません。
以上の4つのポイントが、ファインチューニングする際のデメリットであり、注意する点です。
まとめ
今回は、ChatGPTのファインチューニングの概要や新機能、メリット、デメリットを解説しました。ファインチューニングができると聞くと、オリジナルのLLMを作れたり、最新情報を覚えさせることができると思いがちですが、chatgptに限らず、各LLMでできることできないことがあるので、よく理解して活用しないと、期待するほどの結果をだすことは難しくなります。
当社は、ChatGPTをはじめ様々なLLMの利用や研究を重ね、ビジネスで活用する方法を模索しています。
私どもでは、ファインチューニングだけではなく、RAGを活用することで、限定した情報の出力をするパッケージを開発しています。興味のある方は、お問い合わせください。